ニューふね

「入船」について

ひとたび夜に滑り出ると船はただの小さなアルミの塊になって、 水の上には路がありませんから、一瞬にして大きな地図の上でみえなくなってしまいます。感覚の話ですが、これはきっと圧倒に自由であるということと似ています。油の混じった真っ黒い水 の底に、実はたくさんの生き物が住んでいるのです。
となりの小さな堀川のウナギはおいしく食べられるだとか、その先の造船所に住みついた獣がこどもを五匹出産して住んでいるだとか、そもそもこの川の水を舐めるとちょっとだけしょっぱいのだということを、ほんの数年前まで知りませんでした。
お金持ちが土地を所有していたせいで橋の向きが違うとか、川底に貴重な陶器が沈んでいるとか、有名なお菓子のルーツが川沿いにあったのだとか、話として知らないことには想像もつかないようなことがある一方で、かつてここが海であった名残りは地名や地形などで街のいたるところに散らばっていて、水門をひとつ抜けるとそのまま世界の海とつながっているということは、みんなが知っているあたりまえのことでもあるわけです。知っているのに見えづらくなっているからこそ、その小さな根拠をつきつけてくる身近な体験にとりつかれてしまうのかもしれません。
この本は、夜のクルーズで一度は川に流れてバラバラに散らばったその小さな出来事の断片を、もう一度海の底からすくい上げてホッチキスで閉じたものです。黒い水の底への入り口として。入船。

梅田哲也

入船

梅田哲也らによる船のツアー・パフォーマンス「5つの船(夜行編)/2015」「7つの船/2016」および、梅田哲也とhyslomの「船・2017」など一連のプロジェクトから派生するマガジンで、主に「7つの船」にまつわるテキストと、これにコラボレーターとして様々なかたちで参加した人々による寄稿で構成されています。いまの「本」を考える2日間限りのブックストア「TRANS BOOKS」を発端として制作されました。

※イベント会場のみにて先行発売。(「入船」出版記念クルーズは「入船」付きで、参加料金に含まれています。それ以降の販売についてはウェブサイト(https://newfune.com)にて情報を随時更新)

【執筆者】
阿児つばさ、アンナ・プタック、雨宮庸介、飯沢未央、梅田哲也、河田聡、九鬼みずほ、さわひらき、辰巳量平、西光祐輔、堀尾寛太、hyslom、船川翔司、松井美耶子、山本麻紀子
【アートディレクション・デザイン】尾中俊介(Calamari Inc.)
【仕様】B5サイズ/60ページ/折れ、縒れ、破れ、くっつきあり
【価格】1,200円(税込)

入船 入船

これまでの船について

2015年「5つの船(夜行編)」

5日間、実験的におこなわれた水上ツアー・パフォーマンス。 夜の大阪市内の水の回廊を巡り、さらには大阪湾へ。コースは日替わりで変化し、様々なゲストたちが途中乗船する。

【日程】11月6日〜10日 出演:梅田哲也、松井美耶子、加藤デビッドホプキンズ
【ゲスト】アキビンオオケストラ(11月6日)、hyslom(11月7日)、合唱集団アンサンブル・ムジクス(11月8日)、林本大+ 斉藤敦(11月9日)、ふちがみとふなと(11月10日)
【動画】(撮影:渡邊寿岳) 
https://vimeo.com/181209409 
https://vimeo.com/191787416

入船2015

2016年「7つの船」

前年「5つの船(夜行編)」の体験をもとに制作されたナイト・ クルーズ作品。水路からでしか到達できない大阪の街の裏 側から領海の工業地帯まで、道中に仕掛けられたパフォー マンスや展示空間を巡る。

【日程】12月1日〜4日、9日〜11日
【アーティスト】梅田哲也、雨宮庸介、さわひらき、hyslom、松井美耶子、辰巳量平 ほか

・12月1日、12月2日、12月9日
上り:名村造船所跡地奥船着場〜本町橋船着場/下り:本町橋船着場〜名村造船所跡地奥船着場

・12月3日、12月4日、12月10日、12月11日
上り:本町橋船着場〜名村造船所跡地奥船着場/下り:名村造船所跡地奥船着場〜本町橋船着場

【動画】(撮影:小西小多郎) 
https://vimeo.com/195239999

入船2016

2017年「梅田哲也/hyslom 船・2017」

淀川、大川、寝屋川、大和川などこれまでにツアーをおこなってこなかった水回りのリサーチに同行するツアーと、今後の定期船構想を見据えた試みとしてのパフォーマンス・ク ルーズ、そして2年間で録りためた音源を元にした街中でのインスタレーション+ライブ・パフォーマンスを実施。

・船のツアー 12月16日、3便 船に乗って、大阪中の川、堀川、港を巡るツアー
11:00〜:淀川〜毛馬水門〜大川
14:00〜:堂島川〜中之島漁港〜尻無川
17:00〜:木津川〜大正内港〜尻無川

・作家のリサーチに研究員として同行するツアー
水路:12月4日、5日 梅田哲也とhyslomが乗る小型ボートに同乗して、未開発のコースを探求する。
陸路:12月11日 梅田哲也とhyslomが以前に発見した 、某施設(非公開)の潜入に同行する。

・展示およびライブ・パフォーマンス
展示:12月16日、12月17日 13:00〜19:00 細野ビルヂング 地下室
ライブ・パフォーマンス:12月17日 19:00〜 細野ビルヂング〜長堀通り

・パフォーマンス・クルーズ
日程:2018年3月20日、2便
18:00〜:本町橋船着場〜大正船着場(千代崎港)
20:00〜:大正船着場(千代崎港) 〜本町橋船着場

入船2017

SNSとこれまでの船

website https://7ships2017.wixsite.com/7ships-2017/7
facebook https://www.facebook.com/7ships/
twitter https://twitter.com/7ships2017
tumblr http://7-ships.tumblr.com/

プロフィール

梅田哲也

インスタレーションやパフォーマンスの作品を国内外の美術館や劇場で発表したり、自然のなかでのサイトスペシフィックな作品を手がけたりする。2015年からはじめたクルーズの作品の関係で一級小型船舶操縦免許取得し、造船所に出入りしていたところたまたま船の修理工の富永さんからロシア産小型船"YUZU号"を譲りうける。現在、台東で開催中の「東海岸大地藝術節」および、12月24日まで開催の鳥取県立博物館「ミュージアムとの創造的対話02 空間/経験 そこで何が起こっているのか?」に出展中。
https://www.siranami.com/

hyslom

加藤至、星野文紀、吉田祐からなるアーティストグループ。2009年から現在まで、山から都市に移り変わる場所を定期的に探険する事で得た経験や疑問、人やモノとの遭遇を表現の 根底に置いて、様々なプロジェクトを行う。遊びを通して風景、土地を知る行為「フィールドプレイ」を行い、映像・写真・パフォーマンス作品を制作。その記録/記憶を元に、彫刻作品や舞台、映画の制作も行なっている。2015年から作業場の大家さんである、任氏と共に「任・ヒスロム鳩舎」として日本鳩レース協会に入会。レース鳩のワークショップ・展覧会なども行なっている。2018年11月よりせんだいメディアテークにて個展「ヒスロム 仮説するヒト」開催中。
http://hyslom.com/

「大阪湾海図」梅田哲也
「大阪湾海図」梅田哲也